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複雑性PTSDと発達障害と

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やや専門的な内容を含む記事なので、書き手は専門家や医療従事者ではなく、自身の問題解決を主な目的として当該分野に興味を持ち独習しているだけの一素人に過ぎないということは改めて明記しておく。



(単純性)PTSDが軍事戦闘, 事故, 災害, レイプなどの1度きりの精神的衝撃によるストレス障害を指すのに対して、複雑性PTSDは家庭内暴力や虐待などによる長期反復的なトラウマによるものを指す。
ICDにおいては2018年の第11版において初めてPTSDとは区別された診断基準として記載され、診断名として正式に発効されたのは2022年1月1日。DSM最新の5版においては複雑性PTSDに相当する病態はPTSDの内容に含まれており、名称のうえでの区別はない。
元となる概念は1992年にジュディス・ハーマンらによって提唱されその後議論されてきた歴史があるものの、一般的にはまだ新しい診断名。



当時知り合った人によって私がこの診断名を初めて認識したのはまだ2年半ほど前のことで、私が久しぶりに精神医学に触れるようになったきっかけの3割くらいはその出会いに起因する。解離性同一性障害や愛着障害と共にこの診断名を付けられた彼女の話を聞いている時点での感想は、従来のPTSDとは出来事基準が異なるんだなということと、(愛着障害を含め)自分にも当てはまる要素があるなということくらいだった。その暫く後にベッセルやデイヴィッドやハーマンの著書を読み、私自身がトラウマ・サバイバーと呼べることを理解したうえで、自身にとっての最も適切な診断名としても認識するに至った。

15年以上精神医学を遠ざけていた間にたまたまその関連の話題に触れる際、度々気になった語彙がいくつかある。例えば発達障害とか、ADHD。これらの特徴を示す項目には部分的に私自身にも該当するものがあった。自己を客観視するにあたって、「もしも精神科に10件掛かったとしたら、3件がうつ病、3件が発達障害、1件が統合失調症、1件は健常な人で、残りの2件はその他の診断名を付けると思う」なんて考えたり発言していた。

単語を引用しつつも、発達障害という名称はあまりに釈然としなかった。それは生まれつきの機能障害だとか、遺伝だとか、性格のような特性であるとか、そういう「(放置し無理解なままでいると)社会的にはマイナスに働きかねない元来備わった性質」か、もしくは(これは一部の無知な素人の偏見によるところが大きいかもしれないが)「成長が遅れた・できない人の精神性や社会性の不足したさま」を指しているようなニュアンスが感じられたから。

自身の体験と重ねた時、私が社会に順応しづらい性質を抱える状態になったことは、明らかに家庭を中心とした人間関係周りの出来事に端を発する(と自己分析している)。加えて、1歳頃からのことの多くを覚えている私からすると、当時注意力が散漫だったり無駄に活発だったりしたことも、明らかに親との(不適切な)関係性に基づくものだと因果付けせざるを得ない。更に言うと、そうやって生きづらさを抱えるが故に他人の生きやすさ・生きづらさにも一定の注意と関心を払ってきた私の個人的な観測を基にすればの話に過ぎないけれども、同様の性質を持つ人たちの背景にはやはり(少なくとも昨今の基準では)精神的虐待とかマルトリートメントと定義されるものが潜んでいることを直感することが殆どだったりする。

もちろん生まれつきの問題を抱えるケースもあるのだろうけど、正直私個人は、発達障害なるものは幻であるくらいに捉えてさえいる。



他方、複雑性PTSDも、言うなれば“便利な診断名”だとは思う。虐待の定義が拡大すればするほどに、潜在的な患者数は増大する。例えば日本ではかつて体罰が教育の一環として用いられていたが、1989年に国連総会で子どもの権利条約が採択されたことを皮切りに、国内においても2000年には児童虐待防止法が施行され、2020年の改正児童福祉法では保護者による体罰の禁止が明記された。

仮に捉えどころの乏しい名称が、より物事の因果関係と問題解決法を明確にしうる名称に置き換わるとして、これを不都合としたり拒否感を示す人々がいるであろう事も想像に難くない。



何れにしても、医師の中にはICDやDSMを用いて患者に貼り付けたレッテルに対応する薬の処方を治療行為の大部分とする者がいること、精神医学の定義には政策や法律や文化など流動的な複数の要素が地域ごとに付帯することなどを鑑みるに、その体系の複雑さを痛感せざるを得ない。

またこの程度の内容を書くにあたっても、切り傷や腫瘍が存在する訳でもなく、問診ベースで診断名の決まる精神医学というものの頼りなさと、不可視な曖昧さを多く孕むが故の、継続的な知見のアップデートの必要性や、精神医学に依らない捉え方の必要性についても改めて考えさせられる次第。

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